かわいひでとし日記
思うこと、こころもち、脳内風景


2014.11.02         仏壇の小引き出しの中に


青貝師、

という職業が有ったのですね。

刀などの装飾をするのだそうで、螺鈿だの漆だので、装飾したんでしょうか。



六郎太夫(ろくろだゆう)という青貝師が、娘の梢(こずえ)の為に、

刀を売ろうとした話が有ります。


源平の時代のことです。


娘のムコさんが平家打倒の為に挙兵する軍資金を援助しようと、

刀を売ってお金を得ようと考えたのです。


六郎太夫は、娘を伴って、平家の武士、大庭三郎のところへ、

この刀を買ってくださいと言いに行きます。

値段は300両。

3000万円ですね。



大庭は刀を気に入り、買ってくれる事になったのですが、同僚が、

こんなその場のやりとりだけで、高価なものを買うのはどうかと意見します。



その当時、高価な良い刀というものは、切れ味が良い事が条件でした。

二つ胴、と言って、人間を二人重ねておいて、スパッと4つに切ってしまえるほ

どの切れ味なら、間違い無く高価で売る事が出来ます。

二つ胴が出来た刀には、誰々がこの刀で二つ胴をした、という鑑定書が付いてい

たりします。

その鑑定書さえ有れば、非常に高い値段で売る事が出来るのです。



しかし、その刀には鑑定書は付いていませんでした。



大庭は刀が欲しかったので、その場で二つ胴を試して、見事切れたならばすぐに

買うと言うのでした。



さっそく、牢屋から死刑が確定した二人の囚人が呼ばれる事になったのですが、

死刑囚は一人しかいませんでした。



死刑が確定していない人間を切るわけにもいかないから、今日はこの刀を買う事

は出来ないと、大庭は言うのです。



六郎太夫は、

家に鑑定書が有るのを忘れていました、今すぐ娘に取りにやらせますと言い出します。


六郎太夫は娘の梢に、

仏壇の小引き出しの中に入っているからとってきておくれ、

と言うのでした。

梢は喜んで、急いで家に帰ろうとするのですが、

六郎太夫は、

そんなに走って怪我でもするといけないから、ゆっくり行っておいで、

遅くなっても大事ないのだ、、、。

と言いうのでした。



日が暮れかけようとしている鎌倉鶴岡八幡宮の社頭です。



いいね、仏壇の小引き出しの中だよ、

そのついでに、仏壇にお灯明をあげてきておくれ、と。



娘が行ってしまうと、六郎太夫は、

実は鑑定書が有るというのは、娘を追い払う為に言った嘘だと言うのでした。



どうか自分を二つ胴の一人に加えてくださいと、六郎太夫は言います。


この親父は何を言うのだ、切られてしまっては命が無いぞ。

と大庭は言うのですが、どうしても金が要るので、どうか自分を切ってくださいと哀願します。


元々刀を買いたかった大庭は承知して、二つ胴が行われる事になるのでした、、、。





梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)という芝居はもう、

何度観ただろう。

この芝居は、梶原平三という主人公の立派さを見せる為の芝居なのだけれど、

この六郎太夫のくだりは、つい涙目になって観てしまいます。



最前列の席で観ていた時の事。

六郎太夫と囚人が二つに重ねられ、切られようとするとき、

隣の席のおばあちゃんが、泣きながら手を合わせちゃってねぇ、

拝んじゃってるので、えらい参った事が有りましたねぇ。

こっちまで一緒になって手を合わせてもらい泣きしちゃったんですよねー。



ストーリーだけ書くとベタベタなのだけれど、役者の演技がいいんですね、

ついつい涙が出てしまいます。

歌舞伎はストーリーだけ書くとほんと、とんでもなかったりするんだけれど、

役者の演技に感動するんですよね、、、。



ここに書いたストーリーは、肝心の主人公を省略して書いてしまっています。

本当は、この主人公のカッコよさがたまらなくいい芝居なのです。

トリハダが立つくらいかっこいいんですよ、これが。


ちなみに、このお芝居、むちゃむちゃ嬉しいハッピーエンドで幕を閉じます。

いや、幕外の引っ込みと言って、幕が引かれた後も嬉しい光景を見せてもらえます。

大好きなんだな、この芝居。

思い出しただけで涙目になってたりするわ。

 

梶原平三誉石切

http://www.kabuki.ne.jp/enmokudb/enmoku0002/index.html

追記

この芝居は、本当に役者の技量で魅せる芝居で、今の歌舞伎界に梶原を演じられる役者は何人いるだろう、

六郎太夫を哀れに演じられる役者は何人いるだろう、、。

大御所がどんどん死んでしまって、今、梶原を演じられるのは片岡仁左衛門さんくらいのものなのではないか。

海老様、染五郎ちゃん、勘九郎ちゃんあたりが、60歳を過ぎるまで待たなくてはならないかもしれない。



 


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