かわいひでとし 犬な日々

(1)

俺は子供の頃からいつも家に動物がいたんで、動物とは兄弟みたいな感じがします。小さい頃は庭に犬小屋が有ったんですけど、その犬小屋ってのが普通の犬小屋じゃなくて、庭付き一戸建てみたいな犬小屋だったんですよ。金網で囲った庭の中に小屋が建っているんです。その小屋も結構大きくて、子供だったら5人くらいは入れる大きさだったんですね。そして、ガラスは入っていなかったんだけど、ちゃんと窓もついていました。だから俺はいつも、犬と遊ぶ時は犬の家に遊びに行っていたという感じでした。夕立が来ると犬小屋に入って犬とふたりで雨宿りをしたりもしましたっけ。

その後、飼っていた犬が死んでしまって、暫く家に犬がいない時期が有りました。

小学校1年の時のある日、家へ帰ると真っ黒な大きな犬が茶色い瞳で俺をじっと見て立っていました。それがブラボーとの出会いでした。
ドーベルマンそっくりなのですが、尾は長く、毛は黒なのでドーベルマンと何かの雑種だったのだと思います。近所のアメリカ人の家が引っ越す事になり、我が家へ貰われて来たのです。
「ブラボーって言うんだって」
「英語じゃなきゃ通じないんだよ」
俺は生まれて初めて父に教えられた英語を使って彼に話しかけました。
「シッダーン」
尻上がりのおかしな発音でしたが、ブラボーにはそれがsit downのことだとわかってくれたようで、嬉しそうにお座りをしてくれたのです。
 彼は家にいたどの犬とも違ってご飯を食べませんでした。彼の食事はまるでアメリカ人のように、パンに肉入りのスープをかけたものでした。
これは元の飼い主から引き継いだ事なのか、それとも、家の人間がアメリカの犬だからと勝手に気を使ったのかは解りません。
家の人間も俺も、彼が外国人であるという事でどう扱っていいのかとまどっていたものでした。
そしてブラボー自身も、なぜ人間と一緒に家の中へ入るとしかられるのか理解できずに悲しい思いをしていたのだと思います。